転校を成長のチャンスに! 『新しい出会いを活かして 転校を心理学する』著者・小泉令三先生へのインタビュー【後編】

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転校という一大イベントを経験する子どもたちやその家族。受け入れ先の学校の先生や生徒。
そんな転校にかかわる人々を調査、研究し、転校を取り巻く実態を心理学の観点からまとめた本『新しい出会いを活かして 転校を心理学する』(北大路書房、2002)の著者である小泉令三先生に、「転校生支援プロジェクト」の一環としてインタビューさせていただきました。


前編では、転校生やその家族、受け入れ側が直面する困難や、その解決のヒントとなることを教えてくださった小泉先生。
後編では、小泉先生が転校生について研究しようと思ったきっかけや、本のエッセンスについて、さらに今後、転校生支援に求められることを深堀してお伺いしていきます。


(インタビュアー:利根川 芙海、取材日:2022年2月10日)


小泉先生インタビュー

“環境の変わり目”を経験する子どもたちの成長を研究したい


―小泉先生ご自身には転校の経験はないということですが、どうして「転校」を研究テーマにしようと思ったのですか?


心理学を学ぶなかで、もともとの関心が子どもの学校適応という分野でした。
私が研究をスタートしたときは、兵庫教育大学の大学院生のときで、その大学には付属の小中学校があったんです。
その教育大学には全国から学校の先生が研修ということで大学院生として集まってきていて、その子どもたちが付属の小中学校に入るので、転校生が多かった。
それを目の当たりにして、「転校」は一つの研究テーマになる大事なことだな、という意識が芽生えました。


転校に限らず、こういった環境の変わり目のところを「環境移行」っていうんです。それが当時の私の関心ごとでもあって。それなら転校は研究テーマとしてピッタリだよね、という経緯です。


―転校をテーマにした研究の中で、小泉先生の中で一番印象に残ったことはどんなことでしょうか?


転校ってごくありふれた事象なのに、意外とデータもないし、研究してきた資料もないというのがわかりました。
学校への適応の事例の一つとして転校が取り上げられていることはありますが、転校そのものを研究するということはないんですよね。学校側の協力を得なければならないので、研究しにくいというのもあるかもしれません。


―ちなみに、小泉先生のお子さまもシカゴでの転校経験があったというお話を聞かせていただきましたが(※【前編】参照)、それは研究の後だったんですか?


本を出したのが2002年で、シカゴにいたのが1997年~98年なのでその前ですね。研究は進めていて、本を出す前でした。


―それならちょうどわが子の様子も見て、本に反映したところもあったのですね。


そうですね。本の中で、海外への転校の部分では参考になったと思います。


オフショット

本の中で伝えたかったメッセージ


―その著書『新しい出会いを活かして 転校を心理学する』では、「新しい体験を活かしてほしい」というメッセージが込められていると思います。どんな想いで書かれたのでしょうか?


本の冒頭では、初めてバスに乗るときのことを例にして、新しい体験が成長のきっかけになることをお伝えしています。
自分だけで初めてバスに乗るとき、切符を買うのも改札機に切符を通すのも緊張してしまいますよね。自分がどこで降りるのか、常に気にして心配してしまったという経験もみなさんあるのではないでしょうか?
最初はだれでもドキドキしたり不安になったりするものです。
でも、そういう緊張や新しい経験を通してバスの乗り方が身についていくし、また別の乗り物に乗れるようになって、行動範囲も広がっていくでしょう。


それと同じように、転校や進学のときにもドキドキや不安はつきものですが、それこそ人として成長できるチャンスなんです。
そういったチャンスを活かしてほしいということを、この本全体で伝えています。


―新しい経験というのは、誰しもがすることですよね。でも、それをチャンスととらえるのはそのときは少し難しいかもしれません。


そうなんです。この本でもう一つ伝えたいことが、新しい体験を成長につなげるためには「助け」になることがある、ということなんです。


先ほどのバスに乗るときのお話ですが、もし初めてバスに乗ったとき行き先を間違えたり、降りたいところで降りられなかったら、もうバスに乗りたくなくなってしまうかもしれない。
新しい体験の先には分かれ道があって、その体験をうまく活かせるかどうかで結果が変わってきてしまうんです。


そんなときに、前もってお母さんやお父さんが、「混んでいたら早めに席を立って降りるんだよ」と教えてあげれば、降りたい停留所で降りることができるはずです。


これも転校などの環境の変わり目のときにも言えることで、転校先で有意義な生活を送るために気を付けておくといいことがある、ということを前もって知っておくことはとても大事。
同じように、家族や学校の先生など周りの人も、転校生が何を必要としているか、ということを知っておけば、どうやって転校生を支えていけばいいかがわかります。


本では、具体的にその助けがどんなものなのか、気を付けておいた方がいいことはどんなことなのか、ということをご紹介しています。



地域や年齢に合わせて情報共有ができる“人の輪” 今後の転校生支援に必要なこと


―それでは最後に、今回私たちTENKIN LABが主催している「転校生支援プロジェクト」について、率直なご意見を聞かせてください。


今後は、転校を経験するみなさんにこういうプロジェクトでの成果物、たとえば「転校パスポート」やワークショップなどをうまく使っていただくことになると思うんですよね。


転校にはバリエーションがかなりあると思います。
国内なのか、海外なのか、海外でも国によってシステムも違うでしょうし。文化や言葉の違いなどを含めた対応を考えていくといいと思います。
たとえば、今回の「転校パスポート」、英語版もつくってはどうですか?


あとは情報共有できる場があれば、転校生のご家族としてはすごく助かるんじゃないかなと思います。
地域だけでなく、同じ年齢層のお子さんを持つ親御さん同士でも集まれば助かるでしょうし。
今後、プロジェクトを通してそういった仕組みができてくるといいですね。


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今回小泉先生には、転校という経験を少しでもプラスにつなげられるように、転校生自身ができること、家族や周りの大人たちができることをたくさん教えていただきました。
転校にかかわるみなさんにとって、前向きな気持ちで転校をとらえられる一つのきっかけになったのではないでしょうか。
著書『新しい出会いを活かして 転校を心理学する』と一緒にぜひ参考にしていただけたらと思います。


さらに今回、「転校生支援プロジェクト」を前進させてくれる貴重なご意見もいただきました。
「転校」を“パニック”ではなく”成長の機会”にできますように。
様々な状況に立っている転校生のみなさんを、今後ますますサポートできるように全力を尽くします!


小泉先生、有意義なお話をどうもありがとうございました!


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【小泉 令三(こいずみ れいぞう)先生プロフィール】
プロフィール
専門は教育心理学、学校心理学。
1955年福井県生まれ。大阪大学理学部卒業後、福井県の公立小・中学校で教員として勤務。
教員をしているなかで教育についてもっと深く研究したいと思い、兵庫教育大学大学院学校教育研究科修士課程、広島大学大学院教育学研究科博士課程前期を修了。
『新しい出会いを活かして 転校を心理学する』(北大路書房)、『地域と手を結ぶ学校-アメリカの学校・保護者・地域社会の関係から考える-』(ナカニシヤ出版)他、著書訳書多数。
2022年4月より福岡教育大学名誉教授。
転校に限らず、入学や就職などの環境の変わり目で、新しい出会いを活かして欲しいと願っている。現在は、人と関わる力を育てる「社会性と情動の学習」の研究と実践のサポートを行っている。

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