奈良県、鹿児島県、富山県への転勤を経て、現在は4県目となる群馬県にお住まいの迫優子(さこ・ゆうこ)さんへのインタビュー。
前編では、10年以上の転勤生活のなかで大切にしてきた、【家族】【楽しさ】【受容】の3つの価値観についてお話しいただきました。
(前編はコチラから)
後編では、迫さん一家が転勤を楽しむために実践するノウハウをたっぷり教えていただきます。
現地の情報は現地の人に!
鹿児島への転勤までは、お子さんがいなかったり社宅しか選択肢がなかったり、「家探し」や「転園・転校先選び」に悩むことはなかったという迫さん。
上のお子さんがちょうど小学校に入学するタイミングで決まった富山への転勤で、初めて家探しをすることになります。
「富山への転勤が決まって、まず何をしなきゃいけないかと考える間もなく、自然と富山の不動産屋さんに電話をかけていたんです。」
家の契約は会社指定の不動産業者としなければならないので、直接家探しのために連絡したわけではなかったそうで…。
「まったく土地勘がないところだから、まずは情報収集と思って。検索上位に出てきた富山の不動産屋さん3件ぐらいに、まずは転勤族が多く住むエリアを聞きました。
それからもう一つ、自分たちと同じような年収帯のファミリー層が住んでいるエリアを聞くのもポイント。
安ければいい、高ければいい、ということではなく、自分たちが無理なく安心して暮らしていくために大切な情報だと思っています。
ずっと住んでいれば、あのエリアはこうだって感覚でわかるけど、まったく知らないところに飛び込むからこそそういう情報って必要なんですよね。」
そうして不動産業者から教えてもらったエリアに絞り、実際に現地に行って物件見学、というのが迫さんの家選びの手順。
現地では、様々な人からの情報が得られるといいます。
「わが家はもともと、日本各地で活動している多言語交流の団体『ヒッポファミリークラブ』に入っているのですが、富山転勤の下見のときには、富山のメンバーの方と会っていろいろ教えてもらいました。初対面だったのに、2時間もお茶してしまって(笑)。
そのほかにも、タクシーの運転手さんとの世間話で道の混み具合を探ったり。
群馬では学校を見に行ったときたまたまいらっしゃった教頭先生に、学校の情報を教えてもらったり。
ゆるくつながっている人でも、しばらく連絡していなかった親戚でも、とにかく何かしら情報を得る手段は持っておきたいですね。
私の場合、必要な情報のためなら現地で初対面でもどんどん話しかけます!」
いざ転勤が決まって家探し、学校探しをするとなると、まずはネットで情報を探して、口コミを調べて…という方も多いのではないでしょうか?
様々な手段を使って情報をキャッチする迫さんの行動力には驚きですが、自分が本当に聞きたい情報を得られるという点ではちょっと真似してみたいワザですよね。
自分たちが体感して得られるもの
できるだけ家は見て選びたいから、可能な限り現地に足を運ぶという迫さん。
群馬への転勤の際には、家探しと並行して、2人のお子さんの転校・転園という一大イベントもありました。
実際に家や学校、幼稚園を決めるときに気を付けているポイントはどんなことなのでしょうか?
「不動産屋さんとの物件見学が終わったら、候補の物件それぞれに私たち家族だけで戻るんです。夫は会社までの通勤路を歩いてみたり、私は子どもたちと買い物拠点を探したり。
それからまた家に集合して、今度は子どもたちと夫で校区の学校まで歩いてみる。私は車で先回りして学校に行く。
ひとつ、すごく狭い通学路の学校があったんです。たまたま保護者の方がいたので『ここは車の通りが多いんですか?』と聞いてみたりしました。実際子どもたちと歩いてきた夫も、この道は危ないよねってなって。
この、会社や学校まで実際に歩いてみるっていうのをそれぞれの物件ごとにやって、一番子どもたちにとって安全なところに決めたのが、今住んでいるところなんです。」
現地で物件見学するという転勤族のみなさんもいるとは思いますが、学校や会社までの道のりを実際に歩いてみるというのはなかなかハード!
でもそこまでするから、道が狭くて危ない、といったことがわかってくるのですね。
同時に、子どもたちにも体感させることで、引っ越しするんだ、転校するんだ、という心の準備ができてくるのかもしれません。
子どもの意見も取り入れる、家族みんなの引っ越し
こうして、様々な人から情報をキャッチして、実際に現地に足を運んで体感することで、転勤先での家探しから学校、幼稚園選びまで着々と進めていくのが迫さんの転勤術。
そんな迫さんは、転勤のときに気を付けていることがあるといいます。
「家を決めるのも、学校や園を決めるのも、どうしても親が決定権を持ちがちだけど、わが家では必ず子どもたちの意見も聞くようにしています。
家族で引っ越すんだから、みんなで決めるのが大事。
幼稚園選びも、見学に行った3つの園の中から下の子に選んでもらいました。」
そうして決めた下のお子さんの幼稚園選びでは、少し心残りがあるそう。
「下の子は、あと1年通えば卒園、進学というタイミング。そこをあまり考えずに幼稚園を決めてしまったので、同じ小学校に上がるお友達が一人もいない、という状況になってしまったんです。
校区の違うお友達ばかりだから、幼稚園から帰ってきた後に遊べる子が近くにいないというのも、親としても大変だし、子どもにも申し訳ないなって気持ちです。
これから転園を控えている方には、そうしたことも考慮して子どもに選択肢を与えてあげるのをおすすめします!
でもやっぱり、なにか一つでも自分で決めさせてあげたいですね。
子どもたちにとっても、『自分で決めた』っていう感情がうれしいんじゃないかな。」
どんな状況でも楽しめてしまいそうな迫さんですが、やはりコロナ禍での転勤では、人とのつながりがつくりづらかったりお出かけ先に困ったり、悩みも多いそう。
それでも暗い気持ちを引きずらずに、初めての転校、転園を経験したお子さんときちんと向き合っている姿が印象的でした。
「転勤族だから意識して楽しまないと!」という言葉にも、とてもタフな迫さんの人柄が表れているようです。
転勤生活だからこそ芽生えた【家族】【楽しさ】【受容】という価値観。
迫さんの転勤ノウハウには、転勤を家族みんなで乗り越え、家族みんなで楽しむことを大切にしたいという思いが詰まっていました。
最後に、転勤妻のみなさんへメッセージをお願いします!
「地元を離れたくなくて結婚を渋っていた私が、いざ転勤生活を始めたら地元に帰りたいと思わなくなってしまいました。『転勤大変だね』と言われることもありますが、『長期旅行ができて楽しいよ!』と返しています。
これが正しいということはないですが、もし今転勤生活をツライと感じているのであれば、楽しいと思える何かを見つけてみるといいんじゃないかな?と思います。」
このまちのお気に入り
【まだまだ群馬ビギナー!みなさんのおすすめ教えてください!】
群馬に来てもうすぐ1年。とはいえ、このご時世でなかなかお出かけもできていません。
まだまだ群馬、高崎のことは知らないことばかりなので、ぜひ地元のみなさん、住んだことのある転勤族のみなさんにおすすめを教えていただきたいです!
鹿児島では、マリンポートから見る桜島。富山では、富山大橋から見る立山連峰。その雄大な景色に癒されていました。今では、“ふるさと”の風景になっています。
▼迫さんお気に入りの景色。
マリンポートからの桜島
インタビュー・文:あずま るに / ライター / 焼き菓子のお店única(ウニカ)店主
※あずま るにプロフィール:東京出身。お菓子作りの夢を追って富山に来たのが7年前。農家でのお菓子作り、富山県移住相談員を経て、第一子の育休中にフリーライターに転身することを決意。店舗を持たない小さな焼き菓子店との“二足のわらじ”に挑戦中。
生粋の富山男子である夫、2歳の娘、甘ったれ茶トラ猫と暮らしています。