富山県ウェルビーイング推進課が主催しているとやま転勤族コミュニティ「E-TENKI(いーてんき)」。
富山県に関係する転勤族の情報収集の場として、交流の場として、地域との接点として…様々な形で転勤族に寄り添うオンラインコミュニティを目指しています。
今回は、「E-TENKI」が開設された背景や担う役割、その裏側にある富山県の思いとはいったいどんなものなのかというところに焦点を当て、富山県ウェルビーイング推進課の牧山課長にお話を伺いました。
県民だけでなく、富山県に関わりを持ってくれるすべての「関係人口」を巻き込んだ、「幸せ人口1000万」構想のもと、富山県に関係する転勤族のみなさんにも充実した日々を過ごしてもらいたい。
前編では、そんな「E-TENKI」発足への思いをお聞きしました。
後編では、「E-TENKI」が実際にどんなふうに活用されているのか、また、今後の課題や展望をお伺いしていきます。
“心ある”交流の場に
令和4年6月から始動した「E-TENKI」は、現在95人もの方に参加いただいており、帯同されている方を含めると2~3倍になります。(12月1日時点)
―――このオンラインコミュニティに込められた想いについて教えてください。
牧山課長:ウェルビーイングを感じる上でRelationship(人間関係)は重要な要素のひとつですが(前編参照)、転勤してきていきなり人とのつながりをつくるのって難しいですよね。
ましてや、コロナ禍でなかなか外に出られなかったり、人と会って情報を得たりっていうのができなくなってきている。
そんなときに、まずは入り口として「E-TENKI」のようなオンラインコミュニティがあれば、そこをきっかけにしてつながりづくりをしてもらいたいと思っています。
―――参加者からは、心のよりどころになっているという声も届いているそうですね。
牧山課長:ウェルビーイングの観点から言ったら、「E-TENKI」って居場所と舞台のようなものかもしれないです。
同じ境遇にあって、気の合う人たちが集まるコミュニティであり、発言したら誰かが応えてくれる。
『この前○○に行ってきました!』という発言に対して、『今度行ってみます』『私も行ってきました!』といったやり取りだったり、病院探しで困ってるという発言があれば、たくさんの人が情報を流してくれたり。
小児科探しに困っている方へ様々な情報が寄せられた
情報を投げる人も受ける人もみなさん、“心”があるなと思っています。
人のためにと思ってやっていることって、実は自分にとってもいいことなんですよね。
人との交流の中で幸せを感じられる、まさにそんな場所になりつつあるんじゃないかなと思っています。
転勤族は富山県にとって貴重な存在?!
―――生まれてこのかた富山県外で暮らしたことがないという牧山課長。
転勤族の行動力や「E-TENKI」内で流れている情報は、生粋の富山県民の目にはどのように映っているのでしょうか?
牧山課長:この仕事をしていて思うのは、自分は富山に住んでいるのに富山のことをあまり知らないなって。行ったことがないところも結構多いんです。自分の住んでいるエリア外って、意識的に遠いんですよね。
一方、転勤で来られた方は先入観なくどこにでも行けるし、新鮮な目で見ることができる。それってとても貴重な目線なんです。
富山県に住んでいる方々がどうってことなく思っていたことが、実は外の人からしたら価値あることも。それを見つけてもらえるのは富山県にとってとても大事なことです。
新しい目線を楽しめるかどうかで、県民の富山県に対する見方もガラッと変わってくるんじゃないでしょうか。
多様な人が幸せに暮らせる富山県を目指して
―――着々と参加人数も増え、活発なやり取りがされている「E-TENKI」ですが、まだまだ動き始めたばかり。
今後の課題や展望を教えてください。
牧山課長:現在もたくさんの方に参加していただいていますが、もっと裾野を広げていきたいです。
単身赴任の方や独身の方も参加してもらえるとより人の輪も広がるんじゃないかなと思っています。いろんな角度からの情報が入ってきたり接点が増えたりするのは、参加者にとってもいいことですよね。
―――コロナ禍の影響もあって、オンラインコミュニティという特性が功を奏していますね。
牧山課長:オンラインはオンラインの良さがありますが、こうしたオンライン上でのつながりをもとにリアルなつながりも広げていってもらえればうれしいですね。オフ会や交流会に参加したり、自分で何か企画したり。
「E-TENKI」内の“サークル活動”として、ブルーベリー狩りを楽しむ参加者のみなさん
そうして自分の「居場所」や「舞台」を見出してもらえるんじゃないでしょうか。
このコミュニティが心の支えとなり、幸せに暮らす土台となってくれれば本望です。
―――富山に転勤で来ている方だけでなく、富山に転勤経験のある方やこれから富山に転勤予定のある方も参加できるのが「E-TENKI」の特徴ですね。
富山を離れたあともつながり続けられるツールとして、どんな未来像を描いているのでしょうか?
牧山課長:人との交流や地域とのつながりの中で充実した富山生活を送ることができたら、富山を離れてもきっといい思い出とともに心に残ると思うんです。富山っていいところだったよ、と広めてもらえれば私たちもうれしいですし。
別の土地に転勤になっても「E-TENKI」でつながり続けて、『富山って今こうなっているんだ』って見てもらったり、先輩転勤者として情報提供してもらったり。
そんなふうに、どんどん人流が増えて、コミュニティの輪も広がっていくのが理想的な形です。まさに、「幸せ人口1000万」の目指すところです。
「E-TENKI」のような取り組みによって、多様性を受け入れ、多様性をもって生きられる富山県になっていければいいなと思っています。
--------------------------------------------------
地元の人もそうでない人も、富山にご縁があって関わる全ての人の幸せを実現させるべく掲げられた「幸せ人口1000万」構想。
なにかのご縁で富山に来た転勤族にも富山での生活を豊かにしてもらえるように、心のよりどころとして「E-TENKI」を活用してもらいたい。いずれ離れるときがきてもずっと富山とつながっていてほしい。そんな富山県の思いをお聞きすることができました。
最後に、牧山課長から転勤族や「E-TENKI」参加者のみなさんへのメッセージをいただきました。
「『ちょっこし寄ってかれま。』(『ちょっと寄ってって。』の富山弁)という気持ちでやっています。
ぜひ周りの方にもお声がけいただき、気軽に参加していただければうれしいです。」
文・インタビュー:あずま るに / ライター / 焼き菓子のお店única(ウニカ)店主
※あずま るにプロフィール:東京出身。お菓子作りの夢を追って富山に来たのが7年前。農家でのお菓子作り、富山県移住相談員を経て、第一子の育休中にフリーライターに転身することを決意。店舗を持たない小さな焼き菓子店との“二足のわらじ”に挑戦中。
生粋の富山男子である夫、3歳と0歳の娘たち、甘ったれ茶トラ猫と暮らしています。