「生き方いろイロ 転勤トイロ」vol.3 中川ユリさん 10年間で7回引っ越した私が定住を決めた理由【前編】

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中川ユリさん

人生で大事にしている“価値観”は、迷ったとき、岐路に立ったときの道しるべになるはず。
そんな思いから、その人の価値観に焦点を当てて、その人の過去、現在、これからをお伺いしていくインタビューシリーズ「生き方いろイロ 転勤トイロ」。


転勤妻は変化が多いぶん、様々な人生の選択を経験していけるのが、面白くもあり大変な部分だと思います。
その時々で悩みながらも、進んでいく道をひとつひとつ決めていった女性たちの生き方が、みなさんの参考になりますように。


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突然ですが、転勤妻のみなさんはいつまで転勤についていきますか?将来の定住地について考えたことはあるでしょうか?


ずっと帯同し続けるのか、いつかどこかに定住するのか…。これは転勤妻の抱える最大の悩みのひとつですよね。


今回は、10年間の転勤生活に終止符を打ち、実家から離れた縁もゆかりもない場所に定住することを決めた家族のお話。


定住という大きな決断に至ったのには、あまりポジティブではない理由があったからだそう。
「でもこれがリアルだし、同じように悩んでいる人もいるはず」と、転勤妻の中川ユリ(なかがわ・ゆり 仮名)さんはご自身の経験を赤裸々にお話ししてくれました。



中川さんが大切にしている価値観は?―家族、柔軟、正直さ


中川さんは3人のお子さんを持つママ。お子さんが生まれてからは子育て中心の生活でした。昨年仕事を再開し、今では育児に家事に仕事に奮闘する毎日だと言います。


そんな中川さんが大切にしている価値観として挙げてくれたのは、【家族】【柔軟】【正直さ】
妻として、ママとして、ひとりの女性として…そこには凛とした中川さんの生き方が見えてきました。



10年間で7回も!変化の絶えなかった転勤生活


ご自身も旦那さんも九州出身の中川さんは、結婚後10年で7回もの転勤を経験しました。


「初めての転勤は福島へ。やっと生活が整ってきたと思っていたところで東日本大震災が起こりました。
夫の会社から避難命令が出て、一時避難先となった富山にそのまま転勤。
その後は、1年前後のスパンで福井、長崎、富山、福岡へ。そして3回目の富山転勤が丸5年と長い滞在になりました。」


10年の間に、見知らぬ土地での仕事や子育てを経験した中川さん。


「1回目の富山にいるときに仕事を始めました。長崎にいるときに第一子を出産して、育休中の産後3か月で2回目の富山転勤。
知り合いも頼る人もいないし、人見知りだからママ友もできず…という状況で初めての子育てを経験したこの時期は、辛かったな…。


富山転勤

でも別に、転勤生活自体は楽しいものでした。7回も引っ越ししていたらいろんなスキルも身についたし、新しい環境に入っていくことに楽しさを感じていました
夫も私もあまりこだわらない、柔軟な部分があったからここまでやってこられたと思っているんです。」



もう限界…追い詰められて出した答えは?


そんな中川さんに転機が訪れたのは、福岡への転勤が決まったとき。大きな気持ちの変化があったと言います。


「富山で育休が明けてわずか3か月で夫の転勤が決まりました。仕事復帰してから、子どもが風邪をひいたり大変な中やりくりしてきたのに、結局転勤…
職場は全国に店舗があるところだったので異動もスムーズだったのですが、もう次の場所でイチからやっていくエネルギーがなくなってしまい、退職することに。


でもいざ仕事を辞めてみると、大人と話す機会もないし、社会から取り残された気分でした。
なかなか子どもも預けられないし、もう一回働こうっていう勇気もなくなっちゃって。
その後2人目3人目も生まれて、仕事からは長い間遠ざかってしまいました。」


現在2歳になる3人目のお子さんが生まれてからは、頼れる人がいない中での子育てに限界を感じていたと言います。


「夫の仕事は土日休みがなく、帰りも遅かったので、家事や子育てはいわゆる“ワンオペ”状態。精神的にも体力的にも、もう無理!ってなってしまっていました。
3人目が生まれてからは、もうお出かけに行くこともままならなかったんです。


私がしんどいと、家庭内の空気も悪くなって…そんな状況に耐えられなくなって、ついに夫に転職してほしいとお願いしました。」


ワンオペ育児

中川さんは現状を打破するべく旦那さんに“転職”という大きな提案をし、一家は定住することになりました。


自分に正直でいるため、そして大切な家族を守るため、様々な葛藤があるなかで選んだ定住という道。決して独りよがりの決断ではなく、そこには家族の幸せを願う中川さんの強い思いがあったのです。


家族・柔軟・正直さを大切にしている中川さんは、どんな状況で、どんな思いで定住を決意したのか。そして、定住することによって得られたものとは…?
後編では、悩みぬいた心の内をたっぷりと聞かせていただきます。


後編へつづく


インタビュー・文:あずま るに / ライター / 焼き菓子のお店única(ウニカ)店主


※あずま るにプロフィール:東京出身。お菓子作りの夢を追って富山に来たのが7年前。農家でのお菓子作り、富山県移住相談員を経て、第一子の育休中にフリーライターに転身することを決意。店舗を持たない小さな焼き菓子店との“二足のわらじ”に挑戦中。
生粋の富山男子である夫、3歳と0歳の娘たち、甘ったれ茶トラ猫と暮らしています。

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